朝日工業社SUSTAINABILITY

事例紹介01

事例紹介01

株式会社竹中工務店様「北海道地区FMセンター建替計画」
~井水(地下水)熱の活用~

近年、木造建築や脱炭素が注目を集める中、株式会社竹中工務店様は、木造構造、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)・省エネを実現する「北海道地区FMセンター」を建設されました。
この近未来を見据えた計画において、当社は空調・衛生設備を施工しましたが、その中で採用された井水(地下水)熱を利用した設備についてご紹介いたします。

井水(地下水)熱の活用
本計画の主なコンセプト

①井水(地下水)熱を活用した設備の概要

今回採用した井水(地下水)を利用したヒートポンプ※2方式は、井水を帯水層から汲み上げ、冷暖房システムの熱交換器であるヒートポンプの温熱源、あるいは冷熱源として利用する方式です。井水は水温が安定しており、年間を通してその土地の平均気温程度であるため、夏場は冷却に、冬場は加熱に利用することで、効率のよい冷暖房が期待できます。また、井水(地下水)の熱エネルギーは太陽光や風力と違い、天候や地域に左右されない再生可能エネルギーです。
このシステムの採用は、消費電力の削減につながり、CO₂の排出削減に寄与するだけではなく、冷房排熱を外気ではなく地中に放熱することにより、ヒートアイランド現象の抑制にもつながります。

※2 ヒートポンプとは、少ないエネルギーで空気中などから熱を集めて、大きな熱エネルギーとして利用する技術であり、家庭用のエアコンや冷蔵庫などにも利用されている省エネ技術です。

主な効果
  • 消費電力・CO₂の削減
  • ヒートアイランド現象の緩和
  • 持続可能な地下水の保全と利用

②本計画におけるシステムの概要

地下の熱源水槽より水熱源マルチエアコン用熱交換器を介した後に、地中熱ヒートポンプチラー用の熱交換器の熱源水として利用します。井水流量が足りなくなる可能性があるため、熱交換器を直列につないでいます。二つの熱交換器を経由した後の井水の使用方法は、1次熱源水の温度によって、「熱源水槽に戻す」「中水槽へ補給する」という選択を行い、次に中水槽のレベルが満たされていなければ「中水槽へ補給」、満たされていれば「還元井に放流」という選択を行うこととしており、最後まで井水(地下水)と熱エネルギーを無駄なく効率的に利用することでより高い省エネ効果が得られます。
また、中間期の冷房にフリークーリングを活用することにより、水熱源ヒートポンプチラーを稼働させずに冷水を供給することが可能となり、さらなる省エネ化につながっています。

井水(地下水)熱利用設備のシステム図(夏場)

井水(地下水)熱利用設備のシステム図(夏場)

③本設備の結果概要と今後の展開

竣工(2021年11月)後の冬場の運転においては、パネルラジエーターのみの運転でも室内温度を保つことができており、熱源の負荷のピークがなだらかであるため、夏場においても上記で紹介しましたシステムが有効に機能することが想定できます。
井水(地下水)を利用する場合、イニシャルコストの問題や揚水・放流に関する各種規制などの課題もありますが、井水の熱利用も含めて温室効果ガスであるCO₂を排出しない再生可能エネルギーの利用は、その重要性から今後、さまざまな建物で活用されることが予想されます。当社は、これまでもさまざまな再生可能エネルギーを利用した省エネ設備を展開してきましたが、今後も再生可能エネルギーの活用を積極的に進めて脱炭素社会の実現に貢献していきます。