技術
雪冷房システム
自然エネルギーを利用した施設づくり
朝日工業社は、さまざまな自然エネルギーを利用して、環境負荷低減に努めています。ここでは、“雪”を利用した「米穀低温貯蔵施設」の施工事例をご紹介します。
JA北魚沼「利雪型米穀低温貯蔵施設」
おいしいお米で有名な「魚沼産コシヒカリ」の生産地、新潟県魚沼市のJA北魚沼様では、そのおいしいお米を一年中新米に近い状態で皆さまの食卓へ送り届けられるよう、日々研究し努力されています。
気温約5℃、湿度約75%に保った環境の中で冬眠状態のまま貯蔵されたお米は、「甘み」と「旨み」が少しずつ増し、含水率も高く、冷めてもふっくらとした美味しさが続くという研究結果が出ているようです。ただ、この貯蔵環境を暑い夏に作り出すには、大きなエネルギーが必要となります。
そこで目をつけたのが、冬の雪です。もともとこの地域は豪雪地帯ですので、雪の確保には困りません。「冬の雪を夏に使えたら」と考えて作られたのが、この「利雪型米穀低温貯蔵施設」です。
施設概要 | |
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名称 | 利雪型米穀低温貯蔵施設 |
所在地 | 新潟県魚沼市板木1467番地1 |
敷地面積 | 9,999.00㎡ |
延床面積 | 4,350.71㎡ |
貯冷庫を冷やす仕組み
雪の表面で冷やされた空気を循環させるだけで冷房できるシンプルな構造。必要な機械設備は送風機とダクト設備と自動制御設備だけです。
- 雪室より冷やされた空気①は、バイパス回路より導かれた空気②と混合し、貯蔵庫内温度が約5℃になるように調整された冷風となり、送風機で貯蔵庫に送風されます。
- 貯蔵庫に送風された空気③は、貯蔵されている玄米の穀温や夏の外気の影響を受け温度上昇します。
- 上部に対流した暖かい空気④は吸引され、送風機によって空気⑤は雪室に還ります。
- 空気⑤は雪室で再び冷やされ空気①となり循環します。
【雪解け水排水プール】
屋外にプールを設置し、雪室から排出される冷たい雪解け水を貯めて、夏場、スイカを冷やすことなどに利用します。とことん雪のエネルギーを活用し、約半年後に自然界に放水します。
【温度調整室】
雪温貯蔵庫で冷やされたお米をいきなり外に出してしまうと結露が生じ、お米に悪影響を与えかねません。この温度調整室で、穀温をゆっくり上昇させ結露を防いで、安定した品質で出荷します。
“雪”でCO2削減
公益財団法人雪だるま財団の試算では、雪の冷気を利用したこの低温貯蔵施設は今までの電気エネルギーを使用した場合と比較して、年間約78トンのCO2削減ができるとされています。これは実に76%の削減効果です。実際使われるエネルギーは冷気を搬送する送風機動力のみで、こちらもインバータで細かく制御され、無駄な動力は使わないよう配慮しています。
そのほかの利点も
「米穀低温貯蔵施設」に“雪”を利用することで次のような利点も生まれます。
- 空気中に浮遊する塵埃や米ぬか、不快な臭いまで雪の表面で吸着します。
- 雪の表面で余分な湿気を結露させ、お米にとって理想的な貯蔵環境を実現できます。
- 排出されるのは雪解け水のみ。環境にもやさしい施設です。
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